民事訴訟の裁判の初回期日に被告が来ないのが”普通”

 民事訴訟では、被告は、争う旨の答弁書を出しておいて、初回の裁判の期日に欠席するのは通常よくあることです。


 裁判所で取材している新聞社やテレビ局などは、このことは知っているはずです。

 民事訴訟の手続として普通のことなのに、その点には触れずに、被告側が欠席したということを事件によっては強調して伝えていたりします。

 


 民事訴訟に関わったことのない方は、裁判は初回から裁判の当事者(原告・被告)本人が出席しなければならないものだと思われているかもしれません。

 しかし、裁判の期日には、代理人の弁護士を依頼していれば、弁護士が出席すれば良いので、基本的に原告・被告の本人自ら裁判所に行く必要はありません。

 本人尋問など、当事者本人が裁判所に行く必要がある時にだけ出席するということで問題ありません。

 裁判所に行かないとやる気がないと裁判官に思われるとかいう心配は杞憂です。


 初回の裁判の期日(第一回口頭弁論期日)は、裁判所と原告側で日程調整をして決定するのが通常です。原告側が出席できる日時でないと裁判の手続が進みませんし、初回は被告側は出席する必要がないからです。


 被告には、訴状等と一緒に初回期日の呼出状が裁判所から郵送されます。

 被告は、初回の期日に出席しても構いませんし、欠席しても裁判を争う旨の答弁書を提出しておけば、「裁判を争わないと扱われて敗訴」ということにはなりません。


 被告の答弁書は、たいていの裁判では原告の請求に対して「請求棄却を求める」という形式的な答弁が記載されたものです。

 民事訴訟の報道で「被告側は全面的に争う姿勢を示した」などと言っているのは、意味のある報道ではないです。形式的に全面的に争う(請求棄却を求める)と言っておかないとすぐに全部敗訴となってしまうので、全面的に争う姿勢を”形式的に”示すのは当たり前だからです。


 私は、被告側で依頼を受けた場合は、基本的に初回の期日は出席しません。他に予定があればその予定を変更する必要はありませんし、特に予定がなくても他の仕事をする時間に充てればいいからです。

 民事訴訟の初回期日は、手続的なことで数分で終わる場合が多いです。そのような手続のために裁判所に行くのは、事務所から裁判所に移動する時間等がもったいないです。ですから、多くの弁護士は、被告側になれば初回期日は行きません。


(2017年12月7日公開のマイベストプロ北海道のコラムを加除修正しました。)

弁護士の言いぐさ

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