飲食店のノーショー(無断キャンセル)やドタキャン
飲食店で、予約した人(ニュースになるのは大抵は大人数)が来なかったり、予約時間の直前でキャンセルになることがあります。
弁護士の場合も、法律相談の予約をして来ない人やドタキャンする人はいます。
来なければ、別の仕事をしていれば済むので、大きな迷惑は被りません。
ただ、飲食店は、その予約のために食材を仕入れて仕込みをして、他の客を断って予約に備えているわけですから、
無断キャンセルやドタキャンによる実害は大きくなります。
経済的な損害の他に、裏切られた精神的ショックも大きいでしょう。
連絡があるだけ、ドタキャンの方が無断キャンセルよりまだマシだと考えられます。
そのような損害をできるだけ避けたり、損害を与えた予約者に対して賠償請求を実効的にできないのか、
飲食店側の悩みがあります。
ノーショーやドタキャンの予防を考えてみました。
・予約を受けない
初めから予約を受けなければ、予約客のトラブルは生じません。
けっこうな繁盛店だと、予約を受けないところがあります。
お店の業態などで、予約客を断れないということはあるかもしれません。
しかし、予約客での問題を抱えているお店は、
「予約を受けないでお店を回す」
にはどうすれば良いかを考えてみてはどうかと思います。
・ナンバーディスプレイ
予約を受けたお店で予約した者の連絡先が分からない、ということがあります。
少なくともナンバーディスプレイで、予約してきた電話番号が表示されるようにしておくべきでしょう。
電話番号非通知からの予約は受けないようにすればいいです。
・前金、半金
大人数で、料金も大きくなるような場合は、前金を取れないか、そのシステムを用意できないか検討すべきでしょう。
全額は難しくても、料金の半分など一部の支払をしてもらって被害が生じるリスクを少なくしておきます。
もし、ノーショーやドタキャンの被害にあった場合はどうなるのかも考えてみました。
・犯罪ではないのか
そのお店の業務を妨害するつもりで、実際には来店する意思もなく、予約を入れたということであれば、
偽計業務妨害罪が成立しうるでしょう。
しかし、予定の変更で、予約したお店を利用しなかっただけならば、
予約行為について偽計業務妨害罪は成立しないでしょう。
ただ、予約したお店に行かない(行けない)ことが分かった段階で、
予約した者が予約をキャンセルする旨を連絡すべきなのに
連絡をしなかったということについては、
不作為(すべきことをしないこと)による偽計業務妨害罪と構成できる場合があるのではないかと思います。
なお、ドタキャンや無断キャンセルについて犯罪が成立しうるとしても、
警察が犯罪と認識して捜査するかどうか、受理するやる気があるかどうかとは別問題です。
・損害賠償請求できないか
予定された代金相当額については、ドタキャン・無断キャンセルにより生じた損害となる場合が少なくないでしょう。
予約のあった時間に他の客を入れたのであれば、その分の売上を控除したものとなります。
予約した者が分かったとして、その者に請求書を送ることに飲食店としてはためらうようです。
どうしても悪評が付くことを恐れるようです。
しかし、ドタキャンはそれぞれ事情があるかもしれませんが、
無断キャンセルような場合は特に、そのような予約を入れた者は、もはや「お客様」と呼べるような者ではありません。
その者の周りでのお店の評判が下がったとしても、筋の悪い「客」が来なくなるだけでしょう。
ネット等で悪評をばらまかれるようなことは、別の不法行為の問題となります。
飲食店が大事にすべきなのは、予約の準備をしたスタッフであり、他のまともな客の方です。
・訴訟までするのか
損害賠償(代金)の請求書を送付しても支払わない者に対して、訴訟や支払督促を起こすかどうかというのも飲食店には悩ましいでしょう。
自分で訴訟の準備をするのはできないので、弁護士に依頼するとすれば、
その費用がかかるだけでより赤字が増えるということになりかねないとの心配があります。
たぶん、無断キャンセルの場合を単発で弁護士に依頼をするとすれば、費用倒れの可能性が少なからずあるでしょう。
弁護士費用の負担の問題まで考慮するとすれば、
無断キャンセルのような場合の対応まで含めた顧問契約を締結しておくとか、
弁護士費用の保険に加入しておく(飲食事業のことまで対応する保険の内容になっているかどうかは確認が必要です。)
という事前の方策が考えられます。
1社での顧問契約が難しければ、組合で契約してもらうとかグループを組んで契約するとかの方法もあるでしょう。
美味しくて良心的なサービスのお店には、
一人の外食好きとしても
無断キャンセルやドタキャンで疲弊してもらいたくありません。
何らかの対策をして、安定した営業を続けていってもらいたいです。
(マイベストプロ北海道で2018年1月12日 公開のコラムを加除修正しました。)
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